経済 ECONOMY 働き方改革 ”人材”育成


海事産業に挑む女性を応援

担い手不足、高齢化深刻

「男の仕事」のイメージ定着

比率は海運2%、造船5%



 多くの業界と同じく、国の基幹産業である海事産業も人手不足と高齢化が深刻だ。 人材確保に各企業が努力を重ねているが、担い手として期待されている女性の就業が進んでいない。 現状を紹介するとともに、女性の活躍推進の重要性と今後の対策について、国土交通省の交通政策審議会・海事分科会長などを務める、 早稲田大学法学学術院の河野真理子教授に聞いた。

 海事産業とは、海運や造船、船舶部品などを製造する舶用工業の総称で、 海に囲まれた海洋立国・日本にとって欠かせない産業だ。
 外航海運は輸出入貨物の99%超、内航海運も国内貨物の役40%の輸送を担う。 また、国内旅客船は年間約9000万人が利用し、日本経済や国民生活に大きな役割を果たしている。
 一方、造船業は世界最高峰の高品質な船を供給し続け、国の輸出部門の一角を占める。 また、製造部門の海外移転が進む中、造船業者は国内に生産拠点を維持し、瀬戸内海や九州北部地域 などで舶用工業の事業者が集積する「海事クラスター」を形成。 地域経済と雇用の支柱となっている。

 そんな海事産業の課題の一つが”人材”だ。 顕著な例として乗組員、予備船員を合計した内航・外航の船員数は、20年前の4万4000人から、 現在の3万人と減少。 また、特に内航船員は50代以上の比率が50%と高齢化も著しい。
 団塊の世代の大量退職を控えた2000年ごろから海運、造船、舶用工業の各業界は人材確保・育成の取り組みを強化。 ここ10年の労働者数は横ばいだが、他業種に比べて女性の比率が2%、造船5%などと低い状況が続いている。
 その原因を、国交省は「ロープの固縛やホース荷役、溶接、重い資材・機器の使用など身体的負担の大きい 作業が多いイメージが定着している」と強調。 他業種以上に「男性中心」の色彩が濃いことを指摘する。





求められる対策は

特別な配慮などなく、

制度や設備を整えるべき

早稲田大学法学学術院
河野 真理子 教授 に聞く
かわの・まりこ 徳島県生まれ。学術修士(東京大学)、法学修士(ケンブリッジ大学)。 内閣府総合海洋政策本部参与などを歴任。 国土交通省「女性船員の活躍促進に向けた女性の視点による検討会」で座長を務めた。


-海事産業をめぐる人材事情は。
河野真理子教授 海洋国家・日本にとって、海事産業の発展は重要な課題であり、人材確保、育成が必要だ。
そこで他業種と同様に女性の活躍が重要視されているが、女性の採用に関する情報は必ずしも十分でない。 また、働きやすい環境の整備が求められているが、それは男性の人材確保にも必要なことだと思う。

-男性にとってはどういう意味があるのか。
河野 造船、舶用工業の仕事は身体的な負担が大きいイメージで語られることが多い。 例えば、重い機器や資材を女性が扱うには、機械化を進めて作業負担を軽くする必要がある。
新しい技術を投入して身体的な負担を軽減することは、男女問わず歓迎されるだろう。

-船員の場合も作業負担の軽減が課題か。
河野 負担軽減は当然だが、別の課題もある。 例えば、子育て中の母親が船員を続けることが困難な場合もあり、結婚や妊娠を機に退職、または 陸上の勤務に切り替える人が多い。
しかも、船を降りた後の技術革新で新たな知識が必要になるなど、海に戻ることが簡単でない場合も あると聞く。
これらの要因の他に、女性の雇用に過度な心配を抱き、採用に積極的になれていない企業もあるようだ。 こうした事情は日本だけでないようで、諸外国でも女性船員は少ない。
しかし、男性も育児参加への意識が高まれば、同じ課題に直面する。 男女問わず、家族との時間は大切だろうし、逆に、航海を終えた後の長期休暇に魅力を感じる人もいるだろう。 さらに、女性の配乗に伴う設備の対応は労働環境全体の改善にもつながりうる。
課題の本質は性別ではなく、個人のライフサイクルを尊重しつつ、船員としてのキャリアを維持できる仕組みの充実が必要だ。

-船員としてのキャリアを支える仕組みとは。
河野 一度、陸上に移っても船員としてのキャリアを失うことがないよう、 新しい技術を確実にフォローするような施策だと思う。
船舶の運航を地上で支える仕事の中に、船員としての資格や経験が求められるものも多い。 そうした陸上管理の業務も、船員としてのキャリアに組み込める制度があればと思う。

-造船でも新技術の導入が進んでいる。
河野 造船分野で台頭する中国や韓国に対抗するためには、日本はIT(モノのインターネット)技術 やAI(人工知能)の活用など、革新的な技術を生かした高付加価値の船の開発が重要だ。
自動車産業でも電気自動車や自動運転技術で異業種参入が進んでいるように、海事産業にも従来とは違う、 プログラムエンジニアなどの人材が必要で、そこに性別は関係ない。
私が知る、海事産業で働く女性たちは「過度に特別な待遇や配慮は必要ない」と口をそろえる。 産業の発展に真に必要な制度、設備を整えること自体が、志ある女性の活躍を推進することになると確信する。






国交省 先進企業の取り組み発信

輝け!フネージョ★プロジェクト
国交省は今年(2019年)4月から、女性の活躍を推進する「輝け!フネージョ★」プロジェクトを展開。 その中から二つの事例を紹介する。

協同商船株式会社(東京都杉並区)

「女性だけで運航する船」建造へ


 原料や鋼材の船舶輸送を手掛ける協同商船株式会社(福田光容社長)。 男女問わず働きやすいよう、環境整備に取り組み、10年以上前から女性船員の採用を積極的に行ってきた。 2000年以降、船内に女性専用室を設置し、その後、浴室やトイレなども相次いで整備を進めた。 毎年、女性の採用を重ね、現在、甲板部で3人、機関部では2人が奮闘。 船長や機関長を担える1等航海士、1等機関士も生まれた。

女性の活躍の推進役である福田正海専務は「結婚しても、家庭の事情があっても、女性が働き続けられるような船を造りたい」と語り、 同社は現在、身体的負担を軽くする船艙(センソウ)の荷役軽減システムや、子育て支援体制を整えた船舶の 建造を進めており、来年には竣工の予定だ。

福田専務が夢と語る「女性だけで運航する船」に向けて前進している。


旭洋造船株式会社(山口・下関市)

育児休業 職場復帰の不安を払拭


 世界を相手に、長さ150メートル級の貨物船を年間6隻建造する旭洋造船株式会社(超智勝彦社長)。 省エネ船など難度の高い船を手掛け、「技術の引き出しが多い造船所」として名高い。
「造船業の成長のためには、魅力ある職場として認知されることが必要」として、 労働時間の短縮や独身寮の女性専用室整備など福利厚生の充実を進める。 社員の家族らを招く工場見学会などイベントも盛んだ。 居心地の良さから、女性の勤続年数も長くなる傾向にあるという。
自動車運搬船の進水計算を手掛けた係長や、一般事務職から職種転換して生産設計に携わる主任など 女性たちが最前線で活躍中だ。
技術職の女性社員は育児休暇中、「将来の管理職候補。復帰を心待ちにしている」と会社から声を掛けられ、 「休業中も不安がなかった。復帰時期も柔軟に対応してもらえた」と声を寄せていた。




公明新聞 平成30年11月19日掲載




インタビュー記事>>
このひとに聞く〜「活躍支援船 来年竣工予定」
協同商船代表取締役専務 福田 正海

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